AKIRA KUGIMACHI

増崎隆広

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「LUX AETERNA」

「光の画家」と言ったら、大方の皆さんはモネを想起されるだろう。『積み藁』や『ルーアン大聖堂』の連作で、モネは光の移ろいという時間性を、作品という客体の上に投影させた。よって作品に表現されているのは、その時々の光である。 釘町彰さんの『Lightscape』の光は時間を貫く光である。そういう意味では、モネよりも十七世紀のフランス古典主義の風景画家であるクロード・ロランの光の表現に近い。釘町さんの描く光は、鎮魂の旋律を宿すレクイエム的な「Lux aeterna(永遠の光)」である。そこでは「et lux perpetua luceat eis.」すなわち「たえざる光を彼らの上に輝かせたまえ」という鎮魂の響きが、画面から静かに発せられる。 クロード・ロランは、神話や聖書を題材にした風景の中に確たる光の存在を描いた。光は主役ではなく、通奏低音のようなものであった。釘町彰さんの「Lightscape」では光が主役である。それは旧約聖書「創世記」第一章の原初の光を思わせる。夾雑物の一切ない海原の先に、神々しい光が存在するのである。二十一世紀を迎えアートの歴史が振り出しに戻った現在、クロード・ロランの光を再び解釈し直した釘町さんの作品には、時流を越えた新鮮さが漂っている。

釘町さんは『Lightscape』のほかにも、『Seascape』や『Trees』などで存在の根源を追究した表現を展開し、モダニズム的抽象絵画を咀嚼した上での今日的な風景画を描く。それは悠久の事象から抽出される本質の表現となっている。そして卓抜した色感で描かれた省略の効いた画面からは、「空と海」あるいは「砂浜と波」あるいは「樹木と空」という二者の奏でるハーモニーが心地よく伝わってくる。

長谷川等伯の『松林図』に感銘を受けた現代の俊才は、今パリに拠点を構え、縦横無尽に時空を捉えた力作を広く世に問うているのである。

増崎 隆広 (美術評論家)