AKIRA KUGIMACHI

Bifröst

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以前から漠然と虹を主題にした作品を作りたいと思っていました。しかし、それは自分にはあまりに象徴的すぎて難しく、
なかなか手が出ないまま数年が経ちました。
1年ほど前、休暇で訪れていたブルターニュ地方のキャンプ場を歩いていたある晴れた日の午後、 ふと空を見上げると、
上下に反転した二つの虹がくっきりと広がっていました。一輪の虹、あるいは少し遠くに重なって二輪の虹が見えることは珍しいことではありませんが、二輪の虹が上下に反転しているというのはこれまで見たことのない驚くべきものでした。
それは私には、単に科学的に「光のスペクトラムに因る大気光学現象」というにはあまりに神秘的で謎めいた光景でした。
私はすぐにアトリエに戻り、上下に反転した光のスペクトラムとしての虹を絵画作品にする準備を始めました。 虹は光学的には様々な現象が科学的に検証されています。さまざまな色を含みながらも、その全てが白色光から分かれたものであり、各色の間に、明確な境界を引くこともできない。この性質から「多様性」「共存」の象徴としても用いられます。
私は1枚の虹の作品を作っているうちに、これをひとつの絵画としてではなく、12枚の連作として時間の推移を表すような絵画
インスタレーションという形態にしたら面白いだろうと思いました。
それぞれ1点1点が虹を表した作品であると同時に、それら連作全てが繋がってひとつの虹となるような作品にすることで、
連作そのものが、多様性とそれらの繋がりを表すことができるのではないかと考えたのです。
北方神話では虹はBifröstとよばれ「天上の神界に通じる道」と見なされているといいます。またギリシャ神話ではそれを通して
天地を行き来する橋、あるいは、虹は魂が天に昇る道であると考える民族もあるということです。様々な相違はあるものの、
この虹という不思議な現象を前にして、この世とあの世、つまり生と死を繋ぐ橋であると言う人類としての共通な見方が根底には
あるのかもしれません。
私たち人間の脳で解明できることはほんの数パーセントに過ぎないと脳科学者は言います。
この虹を表した絵画を見る時に、現代人はそこに多様性等の希望を見いだすでしょうか、
あるいは何かの予兆を見いだすでしょうか。
または、亡くなった方々が向こうの世界へ行く、その道筋を照らす光を感じるでしょうか。
それが何を意味するのかは、私達ひとりひとりのその時の心に委ねられているのかも知れません。