AKIRA KUGIMACHI

Shadows

<back

shadows1shadows2shadows3shadows4


 



その場所に前の晩に車で着いたときに、すでに何かを感じていた。
もうかなり暗くなっていたダークブルーの空に浮かぶ松の木々は良く見えないながら静かに強い存在感を放っていたが、一晩経って明け方に、それを確かめるためにその辺りを散歩に出かけたのだった。案の定、それらは素晴らしいシルエットを空間に映し出していた。
私は未だ明けつつある旭日に照らされたこの松の木々を見つめながら、瞬時にこの光に満ちた木々のシルエットを描きたいと思った。
それらはシルエットであると同時に光そのものであった。この松のシルエットを描くことで光を絵画で表現できたら、と考えたのだ。
それは光の中に消え入る松でなければならない。この世は全て空、幻想であるというのは仏教の教えだが、現実とも非現実とも言える境目、境界線の光景を描きたかったのだ。

私は光り輝くこの光景の作品に敢えて、影(Shadows)というタイトルをつけた。それは光の風景でありながら、同時に様々なことを示唆させたかったためだ。
光というものに人々はそこに希望を見いだし、またすべての生命を育む源を思い、あるいは夜空に輝く星々に遠くの人への思いを馳せるだろうか。
40億年前、雷の放電という強い光の電圧が海に蓄積され、最初の生命体を形成するアミノ酸が作り出されたという。稲妻という高い電圧がエネルギー源となり、それが生命の誕生へと導いた最初の生物のエネルギーであった。
しかし同時に雷光は、巨木を粉砕し、時には人を死に至らしめ、あるいは化学兵器による光は生命を木々を跡形も無く消し去る。
人々はこの絵画に希望を感じるだろうか。あるいは惨事の瞬間を思うだろうか。また数百年後の人がこの絵画を目にしたときには何を思うだろうか。